花神(上中下)

村医者がオランダ語の翻訳者として宇和島・幕府・長州に雇われ、さらにはその兵練教練本の翻訳で得られた知識から軍隊指揮を任されると言う数奇極まりない運命の中に生きた大村益次郎こと村田蔵六の生涯を描いた長編小説。
あらすじだけ書き出すといかにも波瀾万丈な風ではあるが、実際に読むと全くそう言う印象を受けないのがアラ不思議。物事にたいして真剣に取り組むが決して感情的になることなく、すべてにおいて数学的・合理的に対処するという攘夷という熱に浮かれた当時の人間としては有り得ないほど冷静な性格がそう見せるのであろうが。組織の効率的な運用を第一に考え、相手の顔を立てるなどといった人間関係を全く重視しない。単に相手の顔を立てた断り方と言ったものが時間の無駄としか思えない性格なのであろうが、この性格を理解できる人はそうはいないだろうわな。